本コラムは快眠セラピスト・睡眠環境プランナー 三橋美穂が運営するInstagramの「1日徹夜するだけで脳は1~2年分老化状態にある。」の内容と 「不規則な生活には“アンカースリープ”を」の内容を元に再構成いただいた内容です。
たった一晩の徹夜で・・
「たった一晩の徹夜で、脳は1〜2年分も老化する。」
2023年に発表されたドイツの研究によれば、徹夜による睡眠不足は、脳の老化を加速させる可能性があることが判明しました。MRIで脳を調べると、加齢と似た変化が見られたというのです。
私たちが眠る最大の目的は、「脳」、とくに「前頭葉」を休ませること。前頭葉は、人間らしさの源。考える、記憶する、アイディアを生む、状況を判断する、感情をコントロールする…こうした高度な機能をつかさどる司令塔です。ここがオーバーヒートすると、私たちは“人間らしく”生きられません。
例えば朝7時に起きて、そこから18時間後の午前1時を過ぎても起きていたらどうなるか。なんと、脳の状態は「酒酔い運転」と同レベル。自分では気づかなくても、実は意識が朦朧としているのです。運転していれば違反で捕まるレベルの脳機能低下ですから、そんな状態で働いても、生産性は低下します。
眠る前にイメージすること
とはいえ、どうしても徹夜しなければならない日もありますよね。そんなときは、深夜0時前に90分だけ眠るのがベスト。たった90分でも、深いノンレム睡眠をとることで、脳の機能がある程度回復します。
眠る前には、「90分後にすっきり起きて、集中して仕事している自分」をイメージしましょう。部屋をやや暗めにして体を横たえ、目覚めたら、冷たい水で顔を洗ったり、外の風に当たると一気にスイッチが入ります。
その後また眠気が襲ってきたら、次は椅子に座ったまま15分だけ仮眠を。ノンレム睡眠のステージ2まで入ると、脳がリフレッシュするからです。
眠気をごまかすためにやってはいけないこと
やってはいけないのが、「眠気をごまかすためのカフェイン摂取」。
カフェインの働きは、睡眠物質が睡眠中枢に働きかけるのをブロックするだけなので、コーヒーを飲んで無理やり起きていても、脳の疲労は積み重なり続けるばかり。むしろ能率は落ち、思うような成果が得られません。
睡眠のリズムが崩れる時の対処法
忙しい毎日が続いて、どうしても睡眠のリズムが崩れるときは、「アンカースリープ」というメソッドを使いましょう。
これは「必要な睡眠時間の半分だけでも、毎日同じ時間に寝る」という方法。たとえば7時間寝たい人なら、最低でも3時間半(例えば午前1時〜4時半)は固定して寝る。残りの3時間半は、昼寝や早寝で補えばOK。
さらに、「朝・昼・晩の食事時間も固定」することで、生体リズムはより安定します。これがアンカーミール。この二つを組み合わせることで、まるで荒波の中でいかりを下ろすように、体内時計のズレを抑えることができます。
ただし、アンカースリープは応急処置。体に負担がかかるので、最長でも2週間までが限界です。
最後に
最後にもう一つ、大切なことを。
ときどき立ち止まり、深呼吸をしましょう。呼吸に意識を向けると、心が静まり、集中力が戻ってきます。すると効率が上がり、結果として睡眠時間が確保できます。
「集中→効率UP→早く寝られる→脳が回復→また集中できる」という好循環のスパイラルが始まるのです。
「賢く眠ること」は、人生の質を高める最も効果的な方法です。
あなたの脳を守り、パフォーマンスを支える「今日の睡眠」を、ぜひ大切にしてください。

三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)
寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。
著書に『『オトナ女子の不調と疲れに効く 眠りにいいこと100』(かんき出版)ほか多数。
https://www.sleepeace.com/qa