三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)
全国での講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。
わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、NHK「あさイチ」TBS「ひるおび!」日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビ番組にも出演多数。
「最近、朝早く目が覚める」「夜中に何度も起きてしまう」。年齢を重ねると、こんな声をよく耳にします。「歳だから仕方ない」とあきらめている方も多いのではないでしょうか。実はこの考え方、半分は正解で、半分は誤解です。今回は、年齢と睡眠の関係を整理してみましょう。
たしかに、睡眠は加齢とともに変化します。主な変化は次の二つです。
ひとつは、深い眠りが減ること。睡眠には「脳の眠りのノンレム睡眠」と「体の眠りのレム睡眠」があります。さらに、ノンレム睡眠には「深い眠り」と「浅い眠り」があり、年齢を重ねると深い眠りが減りやすくなります。そのぶん浅い眠りが増え、物音やトイレのために目が覚めやすくなります。
もうひとつは、体内時計の変化です。夜の早い時間に眠くなり、朝は早く目が覚める「朝型」に傾いていきます。眠りを促すホルモン、メラトニンの分泌が減ることも関係していると考えられています。
眠りが浅くなり、時間帯も前倒しになる。これは自然な変化です。この点では「当然」と言ってよいでしょう。
年齢とともに、睡眠時間は徐々に短くなるのが一般的です。これは、年齢によって体が必要とする睡眠時間そのものが変わっていくためでもあります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、必要な睡眠時間は加齢とともに減少するとしています。若い頃と同じ時間を眠ろうとしなくても大丈夫です。
ただし、睡眠時間には個人差があります。大切なのは、時間の長さよりも日中の状態です。昼間は元気に活動できて、強い眠気もない。そうであれば、多少短くても心配はいりません。逆に、日中の眠気やだるさが続くなら、睡眠が足りていないサインです。「何時間寝なければ」と数字にとらわれすぎないことも大切です。
眠れないからと、早い時間から布団に入っていませんか。床の中にいる時間が長すぎると、かえって眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなります。高齢になると時間にゆとりが生まれ、体が求める以上に床にいる時間が長くなりがちだと指摘されています。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、高齢の方に対して、寝床で過ごす時間が8時間以上にならないよう呼びかけています。
眠くなってから布団に入る。起きる時間は毎日そろえる。この二つを意識するだけで、睡眠の質は向上しやすくなります。
夜中に目が覚めて、「また眠れない」と焦っていませんか。焦りや緊張は、かえって目をさえさせてしまいます。目が覚めること自体は、年齢による自然な変化です。時計は見ずに、目を閉じて体を休めるだけでも十分です。どうしても眠れないときは、いったん布団を出て、薄暗い部屋で静かに過ごし、眠気が来てから戻りましょう。
年齢を重ねるほど、日中の過ごし方が夜の睡眠を左右します。
こうした習慣が睡眠欲求を高め、夜の眠りを深くしてくれます。
深い眠りが減ると、睡眠は周りの環境の影響を受けやすくなります。「寝返りが打ちやすいか」「体の重みがうまく分散されているか」「季節に合った温度や湿度か」こうした寝具の条件が、眠りの質を大きく左右します。
たとえば、掛け布団は軽くて暖かいものを選ぶと、寝返りの負担が減ります。枕は、仰向けでも横向きでも首に無理がない高さかどうかを確かめてみてください。
寝具の見直しは、若い世代より、むしろ年齢を重ねた世代にこそ役立ちます。「最近眠りが浅い」と感じたら、布団や枕、マットレスを一度チェックしてみてください。
年齢とともに眠りが変わっていくのは、自然なことです。だからこそ、生活や寝具を整えて、自分に合った眠りをつくっていきましょう。「歳だから」とあきらめず、まずは一つ、始めてみませんか。
全国での講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。
わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、NHK「あさイチ」TBS「ひるおび!」日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビ番組にも出演多数。