週末の寝だめで睡眠不足は解消できる?

三橋先生
週末の寝だめで睡眠不足は解消できる?

「平日は仕事が忙しくて睡眠不足でも、週末にたっぷり眠れば大丈夫」
そう考えている人は少なくありません。では、週末の寝だめで、平日にたまった睡眠不足は本当に解消できるのでしょうか。

結論から言うと、残念ながら「寝だめ」で平日の睡眠負債を完全に帳消しにすることはできません。 それどころか、やり方を間違えると翌週の体調をさらに悪化させる危険性すらあるのです。

睡眠の仕組み

まず知っておきたいのは、睡眠の仕組みです。睡眠には、お金のように「あらかじめ貯めておく(貯金)」ことができません。「明日徹夜するから、今日のうちに12時間寝ておこう」といった前払いは生理的に不可能なのです。

一方で、不足した分が積み重なる「睡眠負債」という現象は存在します。平日に毎日2時間の睡眠不足が続くと、金曜日の夜には「10時間分」の負債を抱えている状態になります。

休日に長く寝る行為は、この「負債を返済する作業」に過ぎません。さらに問題なのは、一気に返済しようとして1日に12時間まとめて寝ても、脳や身体のダメージは完全には回復しないという点です。研究でも、週末の過剰な長眠では、平日低下したインスリン感作性や認知機能の低下を完全には補えないことが示されています。

これは、週末ごとにインドへ行って日本に戻ってくるようなもの。「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」と呼ばれています。

生活リズムの崩れ

それ以上に危険なのが、生体リズムの崩れです。

人の体内時計は、朝の光を浴びて朝食をとることでリセットされ、約24時間の周期を刻んでいます。平日朝6時に起きている人が、休日に正午まで寝ていると、起床時刻が6時間も後ろにズレてしまいます。体内時計のズレは就寝・起床の中央時刻でみるので、3~4時間ズレることになります。

社会的時差ボケが起こす悪循環

社会的時差ボケが起きると、以下のような悪循環に陥ります。

日曜の夜に眠れなくなる(体内時計が後ろにズレているため)
月曜の朝、激しい倦怠感と頭重感に襲われる(いわゆる「ブルー・マンデー」)
週の前半のパフォーマンスが著しく低下する

睡眠不足を解消しようとして行ったドカ寝が、結果として月曜日の朝をさらに辛くし、新たな睡眠不足の引き金になってしまうのです。また、社会的時差ボケが慢性化すると、生活習慣病やうつ病のリスクが高まることも分かっています。

睡眠不足の解消法

では睡眠不足になったときには、どのように解消すればよいのでしょうか。

週末にいつもより長く眠って構いませんが、起床時刻を平日より何時間も遅らせることは避けたいところ。たとえば平日が6時起床なら、週末も7~8時頃までには起きる、といった具合に、できるだけ起床時刻の差を小さくします。

そして起床後に太陽光を浴びて、朝食をとり、体内時計をリセットした後に、もう一度寝てください。午前中の仮眠は夜の睡眠に影響しにくいからです。

そして最も重要なのは、週末に長く眠ることを解決策にしないことです。

「今週も5時間睡眠だったけれど、土日に寝ればいい」と考えるのではなく、どうすれば平日の睡眠時間を30分、1時間と増やせるかを考える。それが本質的な対策です。

そして、平日の短時間仮眠も取り入れながら、上手に睡眠時間を確保してみてください。仮眠は正午から午後3時までの間に、20分程度が適切。深い睡眠に入る前に起きるのがポイントです。

横たわると血圧が下がって20分では起きられないので、椅子に座ってうつ伏せるか、ソファに寄り掛かる姿勢がおすすめです。

まとめ

1.平日の睡眠時間を伸ばす
2.足りなければ昼休みに短時間仮眠をとる
3.それでも不足なら、週末に少し長寝をする(起床時刻は平日+2時間以内)

イキイキとした毎日を過ごすために、心がけていきましょう。



三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)

全国での講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。
わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、NHK「あさイチ」TBS「ひるおび!」日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビ番組にも出演多数。