三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)
全国での講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。
わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、NHK「あさイチ」TBS「ひるおび!」日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビ番組にも出演多数。
「朝起きるとパジャマがびっしょり」「エアコンをつけているのに寝苦しい」。
夏になると、こうした“寝汗”の悩みが一気に増えます。
汗をかくこと自体は、体温を調整するための自然な働きです。とくに睡眠中は、脳と体を休ませるために深部体温を下げようとするため、ある程度の発汗は正常です。しかし、問題なのは汗による“蒸れ”が続くこと。これによって睡眠の質が大きく低下してしまう点です。
人は眠るとき、体の内部の温度である「深部体温」を下げる必要があります。そのために、手足から熱を逃がし、汗をかいて熱放散を行います。
ところが、日本の夏は高温多湿。汗をかいても蒸発しにくく、熱がうまく逃げません。すると体はさらに汗を出し続け、寝床の中が蒸れていきます。この“寝床内環境(寝具の中の環境)”の悪化が、夏の睡眠を不安定にする大きな原因です。
とくに問題なのは、寝具の中の温度と湿度です。一般的に、快適な寝床内環境は「温度33℃前後、湿度50%前後」が理想とされています。しかし夏場は、汗や熱がこもることで湿度が大幅に上昇し、不快感が強くなります。
人は眠っている間も、暑い・寒い・蒸れるといった刺激を脳が感知しています。すると無意識に寝返りが増えたり、中途覚醒が起きたりして、深い睡眠が減ってしまうのです。
「冷房をつけているのに寝苦しい」という声も多く聞かれます。その理由は、室温だけを下げても、“湿気”が残っているケースが多いからです。
睡眠においては、温度と同じくらい湿度が重要です。湿度が高いと汗が蒸発できず、皮膚表面に残ります。これがベタつきや不快感につながり、睡眠を浅くします。
また、冷房の温度を下げすぎると、今度は体が冷えすぎてしまいます。とくに明け方は外気温が下がるため、冷気によるだるさや冷えを感じやすくなります。そのため、夏の睡眠は「冷やす」だけではなく、“熱と湿気を逃がす”ことが重要です。
目安としては、室温25〜28℃程度、湿度50〜60%程度を意識すると、体への負担を減らしやすくなります。体質(暑がり・寒がり)や使用する寝具の保温性を加味して、室温は調整してください。
見落とされがちですが、夏の睡眠の快適性を左右するのは、実は寝具です。エアコンで部屋を冷やしても、寝具の中に熱と湿気がこもれば、寝苦しさは解消しません。とくにマットレスや敷きパッドは体と接する面積が大きいため、素材選びが睡眠の質に直結します。こちらをポイントに選んでみてください。
・通気性
・吸湿性
・放湿性
・熱がこもりにくい構造
「熱がこもりにくい構造」とは、「メッシュ構造」「凹凸のある生地」「通気層があるタイプ」など、空気が流れやすい構造のものです。
夏用寝具として人気の「接触冷感」。
触れた瞬間にひんやり感じるため、暑い夜には魅力的ですが、選び方を間違えると、「最初は気持ちいいけれど、夜中に蒸れる」「ベタついて逆に不快」というケースもあります
接触冷感寝具には、「Q-max値」という冷感性能の目安があります。数値が高いほど、触れた瞬間に冷たく感じます。
ただし、冷感が強すぎる素材は、肌への刺激感が強かったり、冷えすぎにつながることもあります。とくに冷房を併用する場合、明け方に体が冷えてだるく感じる人も少なくありません。
また、接触冷感は“触れた瞬間”の感覚です。長時間使うと体温で温まり、冷感は弱まります。
そのため、「最初の冷たさ」よりも、“睡眠中に蒸れにくいか”を重視したほうが、結果的に快適性は高くなります。
夏の寝苦しさは、背中側に熱がこもることで強くなります。そのため、掛け寝具よりも、実は「敷きパッド」や「マットレス」の影響が大きいのです。
接触冷感でも、通気性や放湿性が低いと蒸れやすくなります。寝返りしたときに熱が逃げやすい構造か。汗を吸って乾きやすいか。ここが重要なチェックポイントです。
とくに寝汗が多い人は、
・洗濯しやすい
・乾きやすい
・汗が残りにくい
という実用性も重視したほうが、清潔で快適な状態を保ちやすくなります。
接触冷感寝具だけで夏を乗り切ろうとすると、限界があります。日本の夏は湿度が高いため、寝具単体よりも、「エアコン+寝具+衣類」の組み合わせで考えることが大切です。
パジャマは、冷気が直接肌に当たりにくい長袖・長ズボンがおすすめです。さらに、吸湿性や通気性の高い素材を選ぶことで、寝汗によるベタつきを軽減しやすくなります。
室温・湿度を適切に保ちながら、寝具で蒸れを減らす。この組み合わせが、夏の快眠にはもっとも効果的です。涼感と通気性を兼ね備えた敷パッドを使えば、室温が高めでも快適に眠ることができます。
精神的ストレスや緊張も、寝汗に関係します。ストレスが強い状態では、自律神経のバランスが乱れ、体温調節や発汗コントロールが不安定になります。
とくに、
・寝つきが悪い
・夜中に目が覚める
・眠りが浅い
という人は、交感神経が過剰に働き、発汗が増えている場合があります。
また、アルコールも寝汗を増やしやすい要因です。飲酒後は一時的に眠気が強くなりますが、体温調節が不安定になり、中途覚醒や発汗増加につながることもあります。
40〜50代では、更年期によるホルモン変化から、寝汗が増えることがあります。とくに女性は、エストロゲンの変動によって体温調節機能が乱れやすくなり、ほてりや発汗が起こりやすくなります。
さらに、極端な寝汗が続く場合は注意が必要です。感染症、甲状腺機能の異常、睡眠障害などが背景にあるケースもあるため、気になる場合は医療機関へ相談してください。
夏の睡眠は、「冷やすこと」よりも、「熱と湿気をため込まないこと」が重要です。
・通気性のよい寝具
・吸湿性の高いパジャマ
・適切な室温と湿度
・熱がこもらない寝床環境
これらを整えることで、寝汗による不快感は大きく変わります。
寝汗は、体からの「睡眠環境を見直して」というサインでもあります。単に冷やすのではなく、寝室環境全体のバランスをみながら調整することが、快眠への近道です。
全国での講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。
わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、NHK「あさイチ」TBS「ひるおび!」日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビ番組にも出演多数。