通勤時間を活用して睡眠の質向上をめざす
要はセロトニン!

2023年12月26日

「睡眠の質向上をめざす」ときくと、何か難しいことのように感じてしますが、実はそうではありません。特別なことをせずに、たとえば通勤時間を活用して、負担なく眠りの質を高めることができるのです。
今回は、眠りのためにできる「通勤時の一工夫」についてご紹介いたします。

トピックス

1.良質な睡眠に欠かせないセロトニン
2.「通勤時間」はセロトニンを分泌させる絶好のチャンス
3.「ガムをかむ」でセロトニン効果を得る
4.自力でセロトニンをつくり出せる「呼吸法」
5.通勤時に三呼一吸法を実践する
6.通勤時にできる!快眠につながる工夫まとめ

1.良質な睡眠に欠かせないセロトニン

睡眠には、心身のバランスを保つさまざまな脳内物質(ホルモン)の分泌が深く関わっています。中でもセロトニンの分泌が重要です。
セロトニンは夜になると「睡眠ホルモン」と呼ばれている、メラトニンに変化します。このメラトニンが分泌されることで、質の高い眠りに繋がりやすくなるのです。逆に、セロトニンが不足すると、メラトニンも不足するため上手に眠ることが難しくなります。良質な睡眠のためにも、日中、セロトニンをつくれるときにどんどんつくっておきましょう。

2.「通勤時間」はセロトニンを分泌させる絶好のチャンス

少しでも効率的にセロトニンを分泌するには、できるだけ午前中に太陽の日差しを浴びるのがポイントです。時間の目安は1回につき5〜30分。猛暑の真夏なら5分でもよいですが、日差しの弱い季節なら30分を目指したいところ。

忙しくて午前中に日光浴の時間をつくれないという方もいらっしゃると思います。そんな方におすすめしたおのは朝食や通勤の時間を利用する方法です。午前中に日差しをたくさん浴びるために、通勤時間を工夫してみましょう。
まず意識してほしいのは、外を歩く時は日のあたるところを選ぶということ。真夏の猛暑日は例外として、基本的に通勤時外を歩くときは日の当たるところを選びましょう。道の両側に歩道があるような場合、信号を渡る手間をかけてでも、日が当たっているサイドを歩くようにします。また、信号待ちのときは、日向を探してください。電車でも、なるべく光が入る窓際に立ちます。こうした日々のコツコツが大差を呼ぶのです(日焼け止めを塗るのを忘れずに!)。季節やその日の雲の動きによって日の当たる場所が変わるので、私はいつも一番明るいルートを探しながら歩いています。また遠回りすることも想定して、10分〜15分早めに家を出ます。会社への道は一つではありません。最短距離で行く必要もありません。発想を切り替えて、いくつかのルートを開拓してみてはいかがでしょうか。

3.「ガムをかむ」でセロトニン効果を得る

「太陽の光」を浴びること以外に、「ガムをかむこと」でセロトニンが分泌される方法があります。ガムをかむことは「咀嚼」のリズム運動になるため、セロトニンが分泌されるのです。通勤時間帯にガムをかみましょう。ミント系の爽やかな味を選べば、エチケット上の効果も期待できるでしょう。くり返しかむ、「咀嚼」という作業でセロトニンが分泌されることにより、プレッシャーやネガティブな気持ちを消去したり、集中力を養うことがわかっています。アメリカの大リーグの選手などがベンチでよくガムをかんでいるのはそのためです。なお、セロトニン研究の第一人者で脳科学者の有田秀穂先生の実験によると、ガムをかみ始めて5分するとセロトニンが出てくるそうです。そして、30分もたつと血中セロトニン濃度が 20%アップするとのこと。となれば、20〜30分はかみ続けたいところです。噛みごたえがなくなってきたら新しく足すなど工夫をしてください。私は、少しでも長持ちさせるために、粒ガムなら2〜3個まとめて口に放り込んでいます。そしてガムが小さくなってきたら、もっと追加します。通勤時、休憩時間などを利用してガムをかむと心が落ち着き、その後の仕事もはかどることが期待できます。

4.自力でセロトニンをつくり出せる「呼吸法」

人は眠るべき時間帯にしっかり眠っていれば、「成長ホルモン」が分泌されます。成長ホルモンが分泌されている間には、全身の細胞の新陳代謝が高まります。つまり、基礎代謝が上がるということ。
加えて、この成長ホルモンには、中性脂肪を分解する役割もあります。そして、中性脂肪の分解が進めば、肥満の解消につながります。さらには、成長ホルモンは筋肉の修復も行うのです。筋肉が太くなれば基礎代謝が上がり、消費カロリーが増えるので、太りにくくなるといえるでしょう。
このように、きちんと成長ホルモンが分泌されるような睡眠をとっていれば、体にとって嬉しいことが沢山おこります。

<三呼一吸法>
1.「フッ フッ フー」と3回鼻から息を吐く
2. 「スーッ」と1回鼻から息を吸う
3. ①②をくり返す

吐くときには、お腹(丹田)のあたりを少しへこませるようにする。ただし、あまり力を入れすぎないこと。あくまで「気持ちいい」感覚を大切にしてください。お腹に力を入れすぎると、毛細血管が縮んでかえって血行が阻害されるので、ほどほどが大事。丹田に力が入る腹式呼吸をくり返すことは座禅に似た効果があり、心を落ち着かせ、自律神経の働きも改善してくれます。

5.通勤時に三呼一吸法を実践する

朝の通勤時に三呼一吸法を行いましょう。この呼吸法に歩行などのリズム運動が加わると、余計にセロトニンが出やすくなるからです。「腹式呼吸のリズム運動」と「歩行のリズム運動」、そして「太陽の光」を浴びることで、トリプルのセロトニン効果が期待できます。目安はだいたい5〜30分。できる人は1時間ほど行ってももちろん0Kですが、5〜30分でも十分望ましい効果を得られます。
前述の有田先生いわく、呼吸を始めて5分くらいで、セロトニンが分泌され始めます。疲れてきたら、このセロトニンが出なくなった合図なので、そこでストップさせましょう。最初はあまりできなくても、毎日行ううちに慣れてきて出来るようになるはずです。
鼻歌を歌うのもおすすめです。鼻歌を歌うときは自然と腹式呼吸になります。三呼一吸法と同じく5分以上継続して行うことで、セロトニンが分泌され始めます。出勤の道すがら、外出先への移動中、家事をしているときなど、歌ったり、ハミングしたりする時間を見つけて行いましょう。

6.通勤時にできる!快眠につながる工夫まとめ

●日のあたるところを選ぶ
●ガムを噛む/20分〜30分
●三呼一吸法を実践/5分〜30分
●鼻歌を歌う/5分

セロトニンは夜になると、快眠を呼ぶ「メラトニン」にかわるので、良質な睡眠のためには日中にセロトニンをつくっていくことがポイントとなります。本日ご紹介しました、「通勤時間にできる睡眠のための工夫」を取り入れて、眠りの質を高めてください。

西川ユカコ/睡眠研究家

昭和西川株式会社 代表取締役副社長 「睡眠サービスコンソーシウム」理事
「ミス日本」ファイナリスト勉強会講師 NHK文化センター青山教室講師

雑誌編集者としてハースト婦人画報社に10年間勤務。現在は昭和西川副社長として、眠りの総合サロン「ムアツスリープラボ」をプロデュースし所長を務める。
また、各界の専門家と快眠のためのグッズ開発、ホテルや施設の睡眠やお昼寝監修、各種メディアへの寄稿などを行っている。

著書「最強の睡眠(SBクリエィティブ)」はAmazon脳神経科学・神経内科学部門で1位を獲得し、中国、韓国、香港、台湾、マカオなどでも翻訳版が発売中。
主な出演実績:NHK「あさイチ」、フジテレビ「めざましテレビ」「ノンストップ!」、FM東京「ブルーオーシャン」、J-WAVE「ゴールドラッシュ」、TBSラジオ「小森谷徹のFINE!」
婦人画報、GOETHE(ゲーテ)、週刊朝日、週刊現代、Forbes(フォーブス)UIA(マキア)など。クロワッサン、ELLE(エル)、FIGARO(フィガロ)、日経WOMAN、MAQ